キモはおいしく食べられました

　オレはハゲは嫌いな方ではない。逆に好きな位だ。あの弾力性といいツヤといいなかなかのものだ。

　夕食にハゲが出てきた。キモも同席している。早速食してみようとその取りやすい身を掴み、口に運ぶ。口内に広がるのは……カメムシの味。
「……カメムシの味がする」と思わずつぶやいた。すると、隣の兄も
「オレも……」オレだけぢゃなかった！てか、気持ち悪い。
「どっか吐くとこは……？」とゴミ箱に咀嚼して砕かれ、よだれにまみれたハゲを残してお茶で口をゆすぐ。
「オレも吐く……」兄も吐き、同じく口をゆすぐ。
　さぁ問題だ。このハゲはどこまでハゲ野郎なのか。一応食べたとこから離れたところをちょびっと削って食べてみ……ゴフッ！思わず添えた手にひっついたハゲの破片。このハゲ、体中にカメムシを飼っているのか？
　結局コイツは全身腐りきったハゲ野郎なのだ。汁までカメムシだ。

　ところで今日のプリントで、「ジルは魚を食わない」みたいな英語の訳文が「汁は魚を食わない」とかいう、ワケが分かるのか分からないのか微妙な誤植になってた。まぁ全くカンケーの無い話。

　このハゲの煮物全体から発せられるフレバーとテイストはカメムシマニアにしか分からない。カメムシオタクにはぎりぎりムリなレベルだ。
　こらぁ食えんだろ、と思ってたら母さんは普通に食べてる。カメムシなんて言われても気付かないらしい。俺が食べたとこも食べてる。あなたにはこのカメムシハゲのふんわり香るカメ臭が分からないの？親父もこのハゲカメムシを食べてる。俺たち子供は食べられない。気のせいで片付けられそうな雰囲気、兄が居てよかった。
　それ以降カメハゲムシには手をつけてない。食って欲しかったら只のハゲになれ。