Can't cry

　あぁ……イリヤの空を読み終わった。そして泣けなかった。雰囲気的には泣けたんだけど、なんか感極まる前に身を引かれたような感じ。
　あそこでもっと扇情的な言葉を交わせば、態度を示せば、泣けていたように思う。あっけなく飛んで行き、後に残ったのは一抹の心に残るナニカと、泣けなかったことによる憤り。エピローグを読み終わった後もどこか腑に落ちない。
　TOKIは、素晴らしい作品の泣き場では極力涙を流すよう尽力している。泣けないのは、真剣に見てないからではないか、読んだ気になってはいるがちゃんと感情移入出来ていなかったのではないか、そんな気分になるからだ。素晴らしいと思った以上は、真剣に読みたいし感情移入もちゃんとしたい。だからといって何度も読み返して無理やり涙を流そうとするのは、何かが違う気がする。そしてその結果どうにも泣けなかったのだから、泣けてくる。

　数時間で頭は冷め、読んだ直後よりは自分の心を客観的に見れるようになる。もしあそこで涙を誘うように文章があったとする。それなら自分は普通に涙が出ていただろう。そしてそれに満足し、"あぁなんて悲しい終わり方なんだろう……"等と思い、余韻に浸るだけで終わるかも知れない。心のしこりは余りのこってないだろう。TOKIは泣いた場合余韻に浸るのが忙しくて、他の事に頭が回らないのである。

　あえてあっさりと身を引き、安易なお涙頂戴に乗っからないことにより、心に残るモノを涙と引き換えにくれたのではないか。TOKIはそう解釈している。もっとも、"そんな微妙な見せ場なんて狙って作れるワケないだろ　お前はただ単に泣けなかった事を、適当な理屈付けてうやむやにしようとしているんだ　泣いた人を羨んでいるに過ぎない"と言われても全く反論出来ない。感受性に欠けている可能性も否定出来ない。が、まあ少なくともTOKIはそう感じたのだ。感じたと思っている。否定的な言葉を並べられても、それは覆らない。
　そして、最終的な評価は"面白い"で、水前寺は笑えて、伊里野はどこか不思議だと思ったら結構普通な所もあって、最後は悲しくてうやむや。という事実が残った。